南極クジラ捕獲調査(JARPA II)に物申す

 国際捕鯨条約では、クジラ捕獲調査を希望し、事業者の所属する国の許可があれば、調査ができることになっています。この条約は、1946年に捕鯨活動の真っ最中に作られました。ですから、そのとき考えられた調査というのは、捕鯨を行っている中での自主的な調査活動でした。当然ながら、調査活動が商業的に利用されるということは眼目ではなかったのです。

 

 1986年に捕鯨モラトリアムに入ったとき、日本政府がこの方法を逆手にとって、 国際的な許可の要らない方法での「捕鯨」に突入しました。それから20年。日本はこの「調査」に毎年5億円もの税金まで投入し、南極海と北西太平洋(2000年から)でおよそ8000頭もの大型クジラを捕獲し、その「副産物」としての鯨肉を市場流通させてきました。

 

 そしてこの6月、ウルサンで行われるIWC国際捕鯨委員会の科学委員会で南極クジラ捕獲調査の第二次計画が発表されます。科学委員会での議論、本会議での議論がどうあろうとも、日本が実行しようとする限りは計画をとめる手段はありません。

 計画は、IWCの始まる60日前までにIWC事務局に届けられることになっていますが、その内容については、本会議が始まるまでは公開してはならないとされています。しかし、4月12日、共同通信は新たな計画ではミンククジラの捕獲数が倍増し、付け加えてザトウクジラとナガスクジラを捕獲する予定(1,2年目は10頭それから徐々に増やす)ということを報じました。

 

 ザトウクジラとナガスクジラはシロナガスとともに、捕鯨全盛期に乱獲され、モラトリアム以前(ザトウクジラは1938年、ナガスクジラは1976年)に捕獲が禁じられた種です。個体数の回復が見られたにしても、まだ途上であると考えられます。また、ザトウクジラについては、オーストラリアではウォッチングの目玉として、産業として成功しているだけでなく、オーストラリアの人々に強い愛着を持たれている種でもあります。そのクジラを捕獲するということは、日本にほかの国の業者が突然やってきて、少しぐらいとっても大丈夫だからとタンチョウヅルを殺す行為と変わりありません。事実、オーストラリアの人々はこの新たな捕獲計画を聞いて大変驚き、悲しんでいます。

 

 そうした計画が大多数の日本人の知らないところで勝手に作られることも大きな問題です。ほかの国から「食べるな」といわれるのはいや、というのは分からないでもありませんが、実際は毎年のようにクジラ捕獲数を増やし、あるいは定置網で混獲して流通するクジラ肉の供給量が増加したため、市場はだぶつき、産業界は繰り返し市場拡大のためのキャンペーンをしなければならない状態です。わざわざ遠くまで出かけて、どうしてもとらなくても、食べることができないわけはないのです。

 

 今月はじめ、東京湾に迷い込み、定置網で死んだコククジラは、驚くほど多くの日本人の関心を呼び、その予期せぬ死に憤りを覚えた人々からの電話が水産庁に殺到したそうです。国内でもクジラは食べるものと考えるよりも、眺めて心を豊かにしたいと思う人が着実に増えているのです。このような納得のいかない計画に対して黙っていないで、計画を断念させるのはわたしたちの責任ではないでしょうか。

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