海の生物多様性とイルカ・クジラ

第10回生物多様性条約会議を終えて

10月18日 から始まった、第10回生物多様性条約会議は、最終日の29日から30日にまたがる議論の末、遺伝資源の公正・衡平な配分を決める名古屋議定書と、生物多様性の消失を止め、その回復を目指した新たな目標「愛知ターゲット」が決まりました。
内容的にはまだまだ不十分なものですが、今後、この中身を実効性のあるものとしていく使命が私たちに課せられた重い 課題として残されました。
気候変動の緩和に大きな貢献をし、沿岸部や島嶼国の貧困層の生活を大きく左右することも含め、海洋の生態系サービス の重要性についての認識も増してきています。海洋の生物多様性の保全に向けて、これからが正念場です。



<会議における海の議論>

さて、海洋に関しての議論ですが、当初、5月のSBSTTAでもまれた内容がすんなり通ると考えられていたに関わらず、内容の一部に関しての合意がなかなかうまくいかず、50時間を超える長い議論が行われました。

新戦略目標にも掲げられた、持続的な漁業に関する議論にはあまり問題はなかったのですが、争点となったのは、公海についてのCBDの役割について でした。

前回のCOP9での決議に従い、海洋保護区の代表的なネットワークを作ることに関連し、生物学的、生態系的に重要な海域(EBSAs)の特定を行い、その目録を作るというところで、ラテン諸国やインドネシアなどが反対し、国を超えた海域に関しては、他の国連機関で行えばいいとしました。しかし、国を超えた 生物多様性保全に関して、また、開発などに際しての環境影響評価、戦略アセスなどCBDの貢献なしにはありえないことです。

結局、目録という言葉をはずし、科学的、技術的な助言を行っていくことや地域別にワークショップを実施して、地域管理機関にきちんと生物多様性の視点を入れていくというところに落ち着きました。

<高度に移動する種にとって不可欠な海洋のネットワーク>
さて、会期中のPEWのサイドイベントでも強調されたように、高度に移動する、クジラやマグロ、サメなど、海洋の生態系にとってなくてはならない種の保全を確立するためには、広大な海域の保護区のネットワークが必要です。公海におけるネットワーク形成を、CBDが主導して実施していくことは、今後、健全な海洋環境を保つためには不可欠です。

<国内の今後の見通し>
COP10会期中の10月23日、「オーシャンズ・デイ・アット・ナゴヤ」という一日かけたイベントがグローバルオーシャンフォーラム主催で開催されまし た。これは、これまで生物多様性条約の議論では脇役のような立場だった海洋をもっと中心に据えていくため、日本を含むいくつかの政府、CBDを含 む国際機関、研究機関や研究者、NGOが集まって行われたものです。

この中で、日本政府は、現在進行中の「海洋生物多様性保全戦略」に触れ、「海のレッドリスト」作成に取り掛かることを発表しました。
これは、これまで希少でありながら、保護対象からはずされてきた海生哺乳類、とりわけ鯨類に、保護の光を当てる可能性のあるものです。

利用と保全の中で、簡単にはいかないだろうと思いますが、科学的な根拠で、保護の必要とされる種について明らかにしていくこと、そして何より、希少なゆえに調査が行われなかったり、資源利用されているため十分な保全措置が取られてこなかった種に関して調査が実施され、多くの人が沿岸の鯨類の実態を認識する過程として、非常に大きな成果であったと考えます。

また、この動向次第では、種の保存法などの法改正につながることにもなります。
今後ともご注視ください。

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