第3次生物多様性国家戦略パブリックコメント募集
- 詳細
- 作成日 2007年9月26日(水曜)17:36
- 「生物多様性」というのは分かりにくい言葉ですが、今回環境省は「いのちのにぎわい」と「つながり、個性」ということばで、やさしく生物多様性がなぜ私たちにとって大切なのかを説明しています。そして、より多くの方々が関心を持ち、意見を寄せることを求めています。ぜひ、前文と理念を読んでみてください。
- 今回、私たちにとって非常に注目すべきことは、「沿岸・海洋の生物多様性保全」が書き込まれたことです。しかし、一方でたいへん残念なのは、水産庁が 管轄する海の生物に関しては、「データを収集する」などでおしまいになっていて、具体的な保全の道筋が相変わらず、見えてこないことです。
- すでに100頭前後しか生息していないニシコククジラの保護についても水産庁は積極的な保護策を打ち出すことができません。
- また、きちんとした調査もしないまま、希少で生息状態も分からないシャチの捕獲計画さえあります。
- 海のキースピーシーズであるクジラ類について、資源対象であるとして希少な種であっても、絶滅の淵にいても何もできないということなら生物多様性国家戦略の名前も泣くことでしょう。
- IKANは、この4月に行われた地方説明会で、海の生物多様性保全の重要さとこれまでなぜ海の生物多様性保全がなおざりにされてきたか、どうしたら前に進むことができるかという提言を行いました。
- 皆さんも、ぜひ海の生物多様性の保全をきちんとしてほしいと意見を出してください。
http://www.env.go.jp/nature/info/nbs190914/index.html
<背景>
1992年に採択され、翌年に発効された「生物多様性条約」を日本は1993年に批准しました。そしてその6条「締約国は、生物多様性の保全及び持続可能な利用を目的とする国家戦略を作成する」に従って、1995年に最初の国家戦略を策定しました。
5年後の見直しにより2002年に「新・生物多様性国家戦略」が作られ、今回は3回目の戦略になります。
第1回目は省庁が勝手に書いたものを寄せ集めたようなものでしたが、新戦略においては、生物多様性の危機の背景が分析され、方向性が示されたところが前進 でした。また、1回目ではほとんどなかったNGOや一般市民の意見をとり入れる姿勢も打ち出され、IKANが要望した「海生哺乳類の資源利用とは別の保護 の方向を」に対して「海棲哺乳類の保護と管理」が書き加えられました。
<第3次戦略では沿岸・海洋の生物多様性の保全が>
今回の戦略案の大きな前進は、なんと言っても沿岸・海洋の生物多様性保全がしっかりと書き込まれたことでしょう。
海は地球上の70%を占め、私たちの命の生まれたところであり、気候風土を形作り、食糧を供給し、有形無形で私たちの生活を支えています。
一方、海洋の自然はいま、気候変動や沿岸開発、海洋の汚染、乱獲、ら網や混獲など、主に人間の活動の影響によって危機的な状況になっています。
海の生態系を守ることの大切さは、国際的にも非常に重要なことと認識され、7月の環境大臣会議の報告では重要項目のひとつに「地球規模のネットワークによ る海洋保護区の設置」が書き込まれましたし、G8に対するNGOのポジションペーパーでは、海洋生態系の保全が原生林保護と並んであげられています。
<世界で6番目に広い排他的経済水域>
排他的経済水域というのは国連海洋法条約で定められたもので、領海の外に設置され、その水域に対しては、当該国が管理の責任を負うというものです。
周囲を海にとりまかれ、世界で6番目に広い排他的経済水域をもつ日本では、これまで海は主として収奪の場であり、包括的な保護管理は行われてきませんでし た。海にすむ生物は、1972年に環境庁(現環境省)ができたときに、内部的な取り決めで水産庁にとどまることになり、資源としての管理以外のものは配慮 されない伝統が続きました。また、複雑な縦割り行政も海の生物多様性保全の障害となりました。
<海洋基本法はできたけど・・・>
省庁間の縦割りという弊害を取り除き、海の統合的な管理をめざし、国交省と与党議員が中心となって今年「海洋基本法」が制定されましたが、ここでも権益と開発が重視され、生物多様性保全の道筋は不透明なものにとどまっています。
海の生物多様性の保全は、私たちの将来の子どもたちの問題でもあります。
ぜひ皆さんが積極的に意見を出してくださるよう、お願い申し上げます。