サハリンエネルギー開発でコククジラに危機
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- 作成日 2003年2月13日(木曜)11:11
エネルギー問題は、どこでも弱い者を直撃するようです。
北海道の北にある南北に細長いサハリン島においても同じことが言えます。
サハリンでは、今2つの石油・天然ガス開発計画が進行中です。サハリンI とサハリンIIの石油、天然ガスプロジェクトです。
【サハリンの石油開発プロジェクト】
サハリンIは米エクソン者が30%、サハリン石油ガス開発(日本)が30%出資し、国際協力銀行が昨年1,100億円出資することを決定しました。
国際開発銀行の資金の一部は、私たちの年金や郵便貯金のお金です。
サハリン北東部の掘削現場からロシア本土と日本にパイプラインを敷く予定ですが、まだ着工していません。
【サハリンII】
もうひとつ、サハリンIIは99年にサハリン島の北、ピルトゥン湾の沖合い30kmに石油の掘削プラットフォームを建設、貯蔵用タンカーから原油供給がは じまっています。しかし、この方法では冬期に海面が氷結して操業ができないために、サハリン島を縦断する800kmものパイプラインを埋設し、冬場も氷結 しない南部コルサコフに基地を建設しようという計画が着々と進んでいます。
このパイプラインは、その間に渡り鳥の中継地となる湿地を横切り、サケの遡上する川をぶったぎって敷設されます。ルートには、およそ1000もの大小の河川があるそうです。
そして、すでに大問題となっているのは、ピルトゥン湾周辺が絶滅寸前のコククジラのアジア系個体群にとっての主要な索餌場所だということです。
【コククジラについて】
コククジラは、北半球に分布しているかなり原始的なヒゲクジラです。かつていた北大西洋では絶滅し、現在はメキシコからベーリング海に分布するアメリカ系統群と、サハリンから南シナ海に分布するアジア系個体群がいます。
アジア系個体群はもともと数が少なく、数千頭しかいなかったところを日本や韓国が捕鯨したために、一時は絶滅したと考えられていました。70年代終わり に、わずか100頭ほどの個体群が発見されましたが、そのクジラたちが夏に餌を漁るのがこの石油基地周辺です。
コククジラの餌の主要なものは、沿岸の浅瀬に住む小型の底生動物です。砂を吸い込み、クジラヒゲで餌をこして食べると言うクジラのなかでも異色の食性をもっています。
当然ながら、初期の捕鯨の対象となりやすかったのとともに、開発や汚染の影響も非常に受けやすいクジラです。
ちなみに、水産庁でさえ、93年の「日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料」で沿岸における社会発展の結果「本種の生存に不適な場と阻外条件が急速に 増加している」ので「生息域の環境の改善を計らない限り、この系統群の絶滅は防げない」と述べています。
サハリンIIはすでにその掘削や輸送、タンカーやヘリコプターなど、開発にともなう騒音や振動によってコククジラに影響を与え続けています。
さらに、99年には油もれ事故が報告されていますが、もれた油はいずれ彼らの餌のすむ海底に沈んでいくのではないでしょうか?
開発会社であるサハリン・エネジー(シェル、三井物産、三菱商事)は環境影響評価書のなかで、クジラ保護プロジェクトを設け、コククジラの生態調査を継続 していくことやコククジラや餌場環境のモニタリングをするとか、掘削音が減少するように泡のカーテンをするとか、船はクジラを見たらエンジンを停止すると かいう「保護」の計画を述べています。しかし、誰がそれをきちんと監視できるのか定かではありませんし、第一、もしモニタリングの結果、深刻な影響が認め られたからと言って、事業を停止するとは思えません(昨年末、FOEに招かれて、サハリン・エネジーの広報の人に質問したところ、経済的に問題がなけれ ば、改善案を検討する、といわれました)。
サハリンIIによる石油の生産量は7億5000万バレル、天然がスは4000億立方メートルだそうです。そして、石油は韓国に(すでに運ばれている)、ガスは日本に、ということですが、実際は、まだ日本の買い手が見つかっていないようです。
この開発計画については、FoE(旧地球の友)が中心となって「液化天然ガスの購買自粛賛同のお願い」を集めています。
(くわしくは、http://www.foejapan.org/aid/index.html)
昨年の鳥獣保護法改正において、原則としてすべての哺乳類が保護対象であることが確認されました。しかし、クジラ類については第80条の例が規定で「他の法例によってその捕獲についての管理がおこなわれている」ということではずされました。
しかし、現在個体数100、繁殖可能個体50頭以下といわれるコククジラについては、捕獲が禁止されているだけで保護、回復のための施策は行われていません。
コククジラ保護にみなさんの声を!
それから、私たちのエネルギー消費削減についての配慮も。
それから、石油のためのアメリカのイラク攻撃に反対の声を!