イルカショーに関し品川プリンスホテルへ要望書送付

癒しの空間? その2


私たちの質問に対して、2月 28日に品川プリンスホテルから返事が来ました。

私たちの質問に対しては具体的な答えが一切なく、また、ホテルというサービス業を行う中で野生動物を扱う特殊性を無視し、一般的な水族館の役割(生き物について楽しみながら学び、考え、交流できる施設)を述べたに過ぎないものでした。

また、誰が見ても明らかな客寄せのためのショーという役割 の代わりに、「生き物の健康管理のために必要」、あるいは「身体の異常の有無の早期発見」など見るほうまで恥ずかしくなるような説明が行われていました。

そこで私たちは、再度手紙を送り、このような不誠実な態度を改めていただくつもりです。

みなさんもどうぞご支援ください。


2005年3月10日(木)

プリンスホテル 代表取締役 中村裕 殿
品川プリンスホテル 総支配人 渡辺幸弘 殿

「この機会です。ぜひとも誠意のある回答を!そして、計画の変更を!」

イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク
事務局長 倉澤七生
埼玉県入間郵便局私書箱10号〒358-8691

 この大変な時期にもかかわらず、早速のお返事ありがとうございました。「さすがにこれまでのあり方とは違うのか」と期待して開封しましたが、いただいた回答を見て大変がっかりしてしまいました。私どもの質問は、ホテルという営業本位のところで野生生物であるイルカを展示・飼育することの必然性と、貴ホテルの動物の福祉についての考え方を聞きたいというものでしたが、いただいた文書の中にその答えは見つかりませんでした。

 まず最初にある「当館は生き物の健全なる飼育環境のもと、多くの方々に海の生き物や環境について、楽しみながら学び、考え、交流できる施設となるよう営業してまいります。」というご回答ですが、貴ホテルがプレスリリースなどで説明されている言葉(エンターテインメント、「大人の癒し」等)にさえ矛盾しており、違和感を覚えました。昨今、動物の福祉への関心が高まり、日本でも昨年環境省によって、展示動物の飼育のマニュアルが作られました。

 飼育するものが、飼育される動物の福祉に配慮し、その飼育環境を動物の生態に即したものにしていくための基本的な指針であり、その中の

第1一般原則の2 動物の選定では

「管理者は、施設の立地及び整備の状況、飼養保管者の飼養能力等の条件を考慮して飼養及び保管する展示動物の種類を選定するよう努めること。また、家畜化されていない野生動物等に係る選定については、希少な野生動物等の保護増殖を行う場合を除き、(中略)慎重に検討すべきであること」としています。

また、同じく

第3共通基準の1 動物の健康及び保管の方法においては

「管理者及び飼養保管者は、その使用及び保管に当たっては、次に掲げる事項に留意しつつ、展示動物に必要な運動、休息及び睡眠を確保するとともに、健全に成長し、かつ、本来の習性が発現できるよう努めること」

とあります。

ホテルという目的が異なる場において、大型の野生動物飼育を行うことがこの基準の意味するところとはかけ離れたものだと考えざるを得ません。また、深夜遅くに及ぶ営業は、展示動物の休息、睡眠の妨げとなり、到底健全な飼育環境と認めることはできません。こうした時代の流れに逆らうような今回の貴ホテルの計画は、一時的な利益を生むとしても、早晩行き詰るものと思います。こうした将来の展望を欠いた計画に、命あるものを利用すべきではないのです。

「多くの方々に海の生き物や環境について、楽しみながら学び、考え、交流できる施設」という文言ですが、説明パネルもおかず、食事やお茶をする背景に利用されるどこにこの方針が活かされているのかまったく疑問です。

飼育基準 第3の1(3)飼養保管者の教育訓練等には

「管理者は、展示動物の使用及び保管ならびに観覧者または購入者等への対応が、その動物の生態、習性及び生理についての十分な知識ならびに飼養及び保管の経験を有する飼養保管者により、またはその監督の下に行われるよう努めること。また、飼養保管者に対して必要な教育訓練を行い、展示動物の保護、展示動物による事故の防止及び観覧者等に対する動物愛護の精神等の普及啓発に努めること」

とありますが、

業種の異なる展示動物の飼養に、具体的にどのような方法をとられるのでしょうか?また、どのようにして「学び、考え、交流できる」できるというのでしょうか?次の文言はさらに違和感を感じさせられるものです。

「イルカなどの海生哺乳類の飼育ならびにイルカプールにてイルカのパフォーマンスを公開する目的は生き物について広く皆様に知っていただくことでありイルカ等、その生態を年令を問わずより多くの方々に実際に見てもらうことによりその素晴らしさの理解を深めてもらうためのものです。」

 イルカのショーは、動物園ではすたれたおサル電車やサーカスのクマの曲芸など、自然界ではありえない珍芸の披露にほかなりません。これが与える教育効果というのは、「人間という強者が囚われのイルカという弱者に対して思うままに支配できる」という間違った効果であり、いかに現代の人間が優しさや相手への思いやりを忘れているかということの表れとして、反面教師にしかなりません。また、もし百歩下がって「生き物について広く知らせるため」の行為だとしても、わざわざホテルのような目的の異なる施設を使って行うことではありません。

「また、パフォーマンスの公開やトレーニングは生き物たちの健康管理のために必要であり、運動することが同時に身体の異常の有無を早期に発見する手がかりとなるものと考えます。」

これはあっけにとられるほど身勝手な言い分です。何でホテルがわざわざイルカを連れてきて健康管理をするのでしょうか?群れから引き離され、親兄弟を失って冷凍餌のために曲芸させられるイルカにとってこれこそ「余計なお世話」ではないでしょうか?

これまで希少な自然を破壊し、公共の利益、福祉にまったく関心のなかった貴グループにとって、こうした生き物を利用するのはあたりまえの行為であったかもしれません。

 しかし、今回の「事件」を通じて、貴グループはこれまでとは異なる企業のあり方について、思いをめぐらせておいでではないか、と私は思っていました。グループの再編にとって、こうした動物を出しに使った儲け話は「些細なこと」と考えられる方もいるかもしれません。

しかし、こうしたことひとつひとつへの誠実な対応をこそ、いま人々が注視していることを忘れないでください。聞くところでは、取調べに対して堤義明さんは品川プリンスの集客力について自慢されたそうです。何も、かわいそうな生き物の犠牲をもってしなくても、立派に営業しているので、これ以上を望むのは「強欲」というものです。企業経営において、古い体質を変えていくためのひとつのステップとして、この機会にアクアスタジアムの計画の変更を真剣にお考え下さることを切に願ってやみません。

以上

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