南極海第二期クジラ捕獲調査に抗議書提出

2007年11月18日

 

「南極海第二期クジラ捕獲調査に反対する」

日本国首相  福田康夫 殿
農林水産大臣 若林正俊 殿
水産庁長官  山田脩路 殿
財団法人日本鯨類研究所所長 森本稔 殿


 私たちは、日本政府が許可を出し、日本鯨類研究所が実施している第2期南極海鯨類捕獲調査(JARPA II)に日本に住む市民として大きな懸念を抱いております。
 今回計画では、ミンククジラ±850頭、ナガスクジラ(絶滅危惧IB類)10頭に加え、新たにザトウクジラ(絶滅危惧II類)50頭と、捕獲するクジラ種、数の拡大をめざしており、 この計画は国際的な責任上、許されることではないと考えております。
 このうちのザトウクジラを日本は留保していません。この種の捕獲と日本への持ち込みは重大な条約違反であり、国が率先して国際条約を踏みにじることを日本市民として見逃すことはできません。
 ご存知のように、ザトウクジラは、過去の捕鯨全盛期において、その好奇心の強さと逃げ足の遅さが禍いし、繁殖海域でも、移動中にも、そして索餌中にも、 すべての生活段階において激しく狩られ、殺されてきた種です。1966年に全海域で捕獲禁止になり、最近になってやっと回復の兆しが見えてきたばかりです。
 捕獲が禁止されてからというもの、ザトウクジラは特異な姿と歌声で人々を魅了し、多くの海域でホエールウォッチングの花形として愛されるようになりまし た。日本においても例外ではありませんが、特に経済的に豊かではない島嶼部などでは、観光資源として、人々の生活を潤しています。
 一方、最近の調査研究の目覚しい発展から、これまで生態が不明であった南太平洋の島嶼海域のザトウクジラの生態が明らかになり、孤立した小さな群れがい くつも存在することが分かってきました。これらの小さな群れは、まだまだ回復が不十分であり、更なる保護を必要としていると考えられています。
 また、オーストラリアの回復しつつある群れにおいても、捕鯨以前と比べればまだまだ不十分であり、オーストラリアの人々はその種の生態解明のための非致死的調査を支持し個体識別などの調査が進んでおります。
 これらのクジラが繁殖を終えて、餌を求め、また体力を回復しに出かけるのが南極海なのです。残念なことに、今回の日本の調査計画では、こうした群れのク ジラたちがターゲットになる可能性が高いと考えられます。そのため、オーストラリアやニュージーランドをはじめ、当該島嶼国は日本の計画に強く反対し、抗 議を行ってきました。
 こうした現状を考えたときに、ザトウクジラの捕獲は国際的な信頼関係を損ない、公海における生物多様性保全を脅かす百害あって一利ない無謀な計画だと思わざるを得ません。

 国の責任あるお立場の皆さんが今一度こうした現状を正しく認識し、ザトウクジラ捕獲を断念してくださることを強く望みます。

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