ツチクジラ (Baird's Beaked whale) Berardius bairdii Stejneger
アカボウクジラ科で最大のクジラ。比較的温暖な北部北太平洋の海域にのみ分布している。日本沿岸には、日本海系、太平洋系、オホーツク系の3つの群れが分布していると考えられている。
頭は丸くて小さく、その先に細長い吻がある。下顎にのみ2~3対の歯が生えていて、その先端が下顎からのぞいている。推定17ヵ月の妊娠期間を持つ繁殖率が低い種であるが、その生態については十分わかっていない。オスの方が長寿という報告や群れのオスが子育てにかかわっているという説もあり、今後の生態の解明が待たれる。
日本では、千葉県を中心に江戸時代から捕獲が行われた。戦後から60年代に地域での肉の利用(タレ)だけでなく、鯨油の供給のために捕獲数が増え、資源としての状況が悪化。1983年に自主規制枠40頭を決定したが、捕鯨モラトリアム決定以後に千葉県の他に宮城県(鮎川)と北海道(網走)が参入し、88年には枠を54頭に拡大、さらに2000年には62頭まで広げて今日にいたっている。