環境省へパブリックコメント提出

環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護業務室 御中
氏名:イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク
   事務局長 倉澤七生
入間郵便局私書箱10号

新・鳥獣保護法の対象鳥獣に、海の生態系の重要な担い手である海生哺乳類が含まれることになったことは評価に値します。しかし、保護の対象範囲が科学性を欠き、あいまいで法としての整合性に欠けるものであることは残念です。
資源利用され、保護対象からはずれてきた海生哺乳類の多くがレッドデータブックに記載されて危機的な状況にあることを考慮し、ぜひとも再考していただきたいと思います。

【該当箇所】
案件1 環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣叉は他 の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣の指定について

【意見】
案件1の「鳥獣保護及び狩猟の適正化に関する法律」の第80条は本法の目的である「生物多様性の確保」に矛盾するので全文削除のこと

【理由】

  1. 本法第80条は当法の目的にかかげられている「生物多様性の確保」に矛盾する
  2. 法文そのものが不適切である。「除外される種を省令で定める」といいながら、海生哺乳類の除外されない種については記述があり、除外される種については個別種の記載がない。
  3. 除外される種についての科学的な根拠と基準がない。「他の法令」とは漁業法、水産資源法、獺虎膃肭臍猟獲禁止法である。しかし、同じ水産資源 法で保護指定されている種のうち、ジュゴンのみ鳥獣法の対象種となり、スナメリ、ホッキョククジラ、シロナガスクジラは対象外とされる。また、同じ鰭脚類 でも、アシカ、アザラシは鳥獣法対象に取り上げられ、トドは除外されている。
  4. 水産庁管轄の法令は、目的が資源確保と水産業の振興であって、生物多様性の確保ではない。異なる目的をもった法令についてどのような基準で「適切な保護・管理」がなされているかという判断基準を示すための論議が行われていない。
  5. 保護の基準が異なる海生哺乳類の71%がレッドリスト記載種である。しかし、水産庁の基準は国際的な基準、あるいは学会基準とは異なるうえ、具体的な保護の施策に欠けるなど、保護に関する危機意識がない。
  6. 金銭的な価値があるものこそ、意識的な保護が必要である野生動物は国民共有の信託財産である。資源として利用されているだけでは、過剰利用への歯止めは生まれ得ない。鳥獣の規定が新たに定められたこの機に、複数省庁の共管で早急に調査を行い、適切な保護の施策を考えるべきである。
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