プレスリリース「はじまりの始まり!〜種の保存法改正・海〜」
6月4日、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)の改正案が5月23日の参議院に次いで衆議院を通過し、1993年に制定されて以来、問題を抱えたまま改正されなかった同法の‘改正’が行われました。
改正論議の開始当初は、国際希少種の国内流通の罰則強化にほぼ絞られていたものの、NGOや法曹界、学会等の働きかけもあり、結果的にはより課題に向けて踏み込んだ改正内容(目的条項に「生物多様性の確保」、国の責務に科学的知見の充実など)が加わり、3年後の(抜本的な)見直しが付則に書き込まれました。
「覚え書きは無効である」
肝心な海生生物については、元々「種の保存法」の対象外という法的根拠のない縛りがありましたが、私たちNGOの熱心な働きかけにより、同法制定当時に環境庁(当時)と水産庁によって結ばれていた「覚え書き」が「無効である」という明言を国会の場において環境省、水産庁両者からえることができたことは画期的なことでした。
これにより、海の生き物たちを除外し続けてきた障壁は(原則として)取り除かれることになりました。
「海洋生態系の要となる海生哺乳類を含めた海洋生物の積極的な指定を」
また、法的な拘束力はないものの、両院の付帯決議に評価を適切に行うこと。また、候補種選定の際、現在は種指定の実績がない海洋生物についても、
積極的に選定の対象とすること
という二つの決議がつき、これまで海の生物が、同法から全く置き去りにされてきたということに光が当たりました。
ただ、環境省は国会答弁で「漁業資源との役割分担」を主張していますし、環境省と水産庁が共同事務局を担った「海洋生物希少性評価検討委員会」では大型魚類や大型鯨類を「二国間あるいは多国間協定で評価済みだから除外する」とし、また、小型鯨類については、除外しないが水産庁の資源評価を適用する、としています。こうしたあり方が種の保存法の趣旨とは相容れないものであることを今後も繰り返し言い続けると同時に、水産庁による小型鯨類評価の結果を監視していく必要があります。
また、今後海生生物についても有効と考えられるのは、3年後の見直しに向けた取組みとして付帯決議に書かれた
常設の科学委員会の法定を検討すること
海については、まだまだ本当に解決の端緒についたかつかないか、という成果ではありますが、とにかく一番の獲得は、これまで表に出なかった海生生物の保全も重要であるということが国会の場で議論され、認識が共有されたという事実だと思います。
今後も注目してくださいますよう、お願い申し上げます。