第3次生物多様性国家戦略パブリックコメントを提出

環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性地球戦略企画室 御中

イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク
   事務局長 倉澤七生           
入間郵便局私書箱10号         


【項目等】[第3次生物多様性国家戦略全体について ]
【意見】

1) 今回戦略の特徴は、なんと言っても担当されるみなさんがより良い戦略作成のために、きめ細かい努力を惜しまれず、懇談会の最初から、フロアの意見を聞くなど、多様な方法を取り入れられたことだと感謝しております。
この方向が今後も、そして、戦略を越えてさまざまな場で継続されることを望んでおります。
2) 今回戦略の内容において、沿岸・海洋の生物多様性保全が書き込まれたことは、大きな前進でした。
また、行動計画においても、各省庁に委ねきることなく、テーマを決めて各省庁との折衝を重ねられ、内容的にも前回戦略に比べ改善が見られたことを評価しております。
  • しかしながら、沿岸・海洋に関しては残念ながら掛け声だけで、陸と比べて保全としての戦略というにはあまりにも部分的、皮相的な結果となったことは情けないことです。
  • これに関しては、環境省だけでなく、内容を受け止めて呼応しようとしなかった水産庁、水産専門家の責任も重いと考えます。


 ○第一部・戦略について

意見1)
【項目名等】 第2章 第1節 1(1)第一の危機
【ページ数】 18頁
【行】 4行目の前に挿入
【意見】 4行目に

「また、沿岸・海洋に関しては、漁業など沿岸・海洋の利用による生物多様性の減少や損失が考えられますが、これまで生物多様性保全の視点からの評価が行われてこなかったため、データも不十分な状況があります。」

を挿入する 。
【理由】 沿岸・海洋に関しての記述により、今後の保全の方向性を考えることができる。
 
意見2)
【項目名等】 第2章 第3節 2 里地里山
【ページ数】 25頁
【行】 4行目の前に挿入
【意見】 「また、『里海』と呼ばれる沿岸海域においては、乱獲、開発や 埋め立て、砂利の採取、廃棄物などで良好な沿岸の生態系を失い、漁業関係者 は人口減少と高齢化問題を抱えています」
【理由】 沿岸・海洋の生物多様性保全が加わったから
 
意見3)
【項目名等】 第2章 第4節 2 日本の生物多様性 (生物多様性保全のため の地域区分)
【ページ数】 30頁
【行】 終わりから2行目
【意見】 「また、沿岸・海洋域についても、海流、気候などの地域の特性 に応じて~海洋保護区を設置するなど保全の~(を挿入)取組を進めていくことが必要です。」
【理由】 陸地における区分と内容をそろえる。
 
意見4)
【項目名等】 第2章 第4節 2 日本の生物多様性 (レッドリストの見直し)
【ページ数】 31頁
【行】 7行目
【意見】 カッコ書きの(上陸しない以下を除く)までを削除
12行目の「ジュゴンを新たに・・・・しました。」のあとに、 「しかし絶滅に瀕しているニシコククジラをはじめクジラ類は対象とされませんでした。」 を加える。
【理由】 「上陸しない海棲哺乳類を除く」という規定は存在していない。
 
意見5)
【項目名等】 第3章 第2節 3 国土に応じたグランドデザイン (6)海 洋域 <目指す方向>
【ページ数】 54頁
【行】 項目の1行目
【意見】 ・長距離の移動・回遊をする動物の保全を~国際的な協力のもと~(を挿入)推進する。
【理由】 長距離を移動する動物の保全は1国ではできない。
 
意見6)
【項目等】 第3章 第2節 3 国土に応じたグランドデザイン (6)海洋 域 <望ましい地域のイメージ>
【ページ数】 54頁
【行】 項目の3行目
【意見】 「関係国と協力した保全活動が」のあとの「市民を中心とし て」を削除
【理由】 国際的な協力には国をはじめとした多様な主体が必須。なぜここだけ「市民を中心とした」という記述があるのか不明。
 
意見7)
【項目等】 第3章第2節 3(7) <望ましいイメージ>
【ページ数】 55頁
【行】 最後から3行目
【意見】 「ウミガメ類、アホウドリ、ウミガラスや(中略)といった海鳥 類、アザラシ」のあとに~ジュゴン、ザトウクジラなどクジラ類~を挿入。
【理由】 海鳥は具体名を出し、ジュゴン、鯨類など絶滅に瀕していたり、又 は特徴的な種名を出さないのはいかにも不自然。
 
意見8)
【項目等】 第4章 第2節 <沿岸・海洋域の保全・再生>
【ページ数】 70頁
【行】 8行目
【意見】 「繁殖地など重要な生息地保全や混獲回避技術の開発・普及など海 鳥やウミガメ」のあとに「クジラ類など海棲哺乳類」を挿入。
【理由】 絶滅寸前のニシコククジラのメスがこの2年余で4頭も定置網にかかって死亡している。種の保存は国家戦略のトッププライオリティのはずです。


○ 第2部 行動計画について

意見1)
【項目名等】 第1章 国土空間的施策 (広域連携施策)第2節 重要地域の保全 (基本的考え方)
【ページ数】 79頁
【行】 下から3行目から
【意見】 「漁業をはじめとする多様な利用との両立を目的とした、地域の合意に 基づく自主的な資源管理の取組やのあとに
~保全を目的とした~を挿入
海洋保護区
~設立~を挿入
など、
「の」を削除

(修文) 「漁業をはじめとする多様な利用と両立を目的とした、地域の合意に基づく自主的な資源管理の取組・保全を目的とした海洋保護区の設立など、生物多様性の保全施策のあり 方について見当を行います」
【理由】 保全と漁業が対立するものでなく、保全することによって漁業の繁栄がもたらされるということを強調すべき。
 
意見2)
【項目名等】 第1章 第2節 1. 自然環境保全法に基づく保全 (具体的施策)
【ページ数】 82頁
【行】 9行目から
【意見】 「また、海洋公園地区の選定用件や見直しを行うとともに、」のまえに
~海洋保護区の考え方を導入し~を挿入

(修文) 「また、海洋保護区の考え方を導入し、海洋公園地区の選定用件や見直しを行うとともに、関係機関と調整を図りながら(以下略)」
【理由】 海洋保護区を具体的に推進する足がかりとして。
 
意見3)
【項目等】 第1章第2節 9.1 世界自然遺産 (具体的施策)
【ページ数】 95頁
【行】 6行目
【意見】 「『琉球列島』については、」のあとに
~ジュゴンをはじめとする~を挿入
【理由】 現在最も絶滅に近い大型哺乳類の保護は国家戦略にとってもっとも重要事項。
 
意見4)
【項目等】 第1章第9節 沿岸・海洋  (基本的考え方)
【ページ数】 169頁
【行】 7行目
【意見】 「さらに、(中略)わが国の沿岸を利用する」のあとに
~クジラなどの海棲哺乳類~を挿入

(修文) 「さらに、国境を越えた長距離の移動・回遊を行いつつわが国の沿岸を利用するクジラなどの海棲哺乳類、渡り鳥やウミガメなどの動物については、 国内のみならず(以下略)」
【理由】 ほかのところでは言及している。また、実際に移動・回遊している海棲哺乳類の種数でクジラ種が最も多いので。
 
意見5)
【項目等】 第1章第9節 1.6 海洋生物の保護・管理 (現状と課題)
【ページ数】 175頁
【行】 (現状と課題)の2行目
【意見】 「このため」のあとに
~生息数が100頭前後といわれる絶滅に瀕するのニシコククジラをは じめ、70%がレッドリストに記載されている海棲哺乳類など~を挿入
【理由】 科学的な保護管理を旨としているのであれば、戦略として言及すること は必須。
 
意見6)
【項目等】 同 (具体的施策)「再掲 同節2.7についても同じ意見です」
【ページ数】 175頁
【行】 具体的施策の3つ目の○
【意見】 「サメ・海鳥・ウミガメ」の前、冒頭に
~クジラ等海棲哺乳類~を挿入
【理由】 ほかの記述にそろえる。海棲哺乳類、特にクジラの混獲については、こ の2年余で4頭の絶滅を危惧されているニシコククジラがら網し、死亡していることでも明らか。早急な措置が必要。
 
意見7)
【項目等】 同(具体的施策)「再掲(同節2.8)も同じ意見です」
【ページ数】 175頁
【行】 5つ目の○
【意見】 「鯨類などの大型生物による(中略)を削除。
【理由】
  • すでに国内外の水産学者が、漁獲の変動はクジラと関係ないというこ とを明らかにしている。科学的知見を踏まえるのであれば、あえてここで言及する必然性がない。
  • 日本語的にも前の文章と後の文章が矛盾している(前の文章では「捕食の実態を把握し」とまだ証明されていない書きぶりであるのに、後半の文章は「影響緩 和の取組を推進」と実態把握の前に結論をいっている)。
  • COP10の前に、産業推進キャンペーンを掲載するのは私たち一人ひとりにとって恥。
 
意見7’)
削除したクジラが害獣説のかわりに:
【意見】 ~「地域行政、漁業者、専門家、NGOなど多様な主体による座礁クジ ラに関するネットワークなどの情報によって、海洋の生物や汚染情報を集めます。」~を挿入
 
意見8)
【項目等】 第1章9節 2.4 生物多様性に配慮した水産資源の保存・管理の推進(現状と課題)
【ページ数】 178ページ
【行】 4行目から
【意見】 「また、(中略)の漁業影響を理由にした」を修文。

(修文) 「(前略)漁業影響を懸念し、マグロ延縄漁業や、公海トロール漁業に対する国際世論に配慮 し、生物多様性条約における公海での海洋保護区設置の動きを推進し、ワシントン条約における国際取引の規制下での水産資源を管理する方向を歓迎して留保品 目を見直し、生物多様性の保全と(の視点だけでなくは削除)科学的根拠に基づく水産資源の適切な保全と持続的な利用の実現に努めます。」
【理由】 前の文章を受けて国際的な動向を受け入れ、国際的にも日本の責任を果たすという観点から。
 
意見9)
【項目等】 同(具体的施策)
【ページ数】 178頁
【行】 3つ目の○
【意見】 全文削除する。
【理由】 鯨肉流通は、全水産物流通560数万トンのうちのわずか5~6000トン前後です。
その供給のため公海で費やされる多大なエネルギーは地球環境にとってマイナスであり、税金をつぎ込んでやっと流通を維持できる鯨肉供給は、経済的にも引き合いません。実際、大手水産会社は総じて、捕鯨から撤退の方向です。
政府が行っている開発国の水産援助(はこもの)による国際世論の形成方法は私たちの税金でまかなわれていることも問題です。
鯨肉の利用について否定はしませんが、国家戦略にわざわざ書き込むプライオリティは高くありません。
 
意見10)
【項目等】 同2.6 生物多様性に配慮した増殖と持続的な養殖生産(現状と課題)
【ページ数】 179頁
【行】 冒頭から2行目
【意見】 「(前略)資源を回復、増加させることが必要です」を
「させてきました。」に変更。

(修文) 「その際、生物多様性の保全への配慮が重要です。」のあとに
しかし、これまで放流する海域の生物調査などが不十分であり、また、放流後の影響評価も行われてきませんでした。今後は、当該海域における種の選定と ともに調査と影響評価を行いつつ、生物多様性保全に努める必要があります」

同(具体的施策)
(修文) ○放流計画の策定、種苗の生産、放流にあたっては当該海域の種を選定し、生物多様性の調査・評価を行い、(中略)系群の影響などに配慮し、放流による影響を調査・評価するなど (中略)」
(修文) ○養殖業については、
「養殖されている魚の野生への逸走による外来種問題を防ぐ構造の生簀等を配置し、」を挿入
 
意見11)
【項目等】 同2.7 (現状と課題)
【ページ数】 180頁
【行】 2行目
【意見】 以下の文章を付け加える。

「しかしこれまで、野生水生生物に関しては資源管理に偏りがちで、包括的な野生水生生物全体の保護・管理はおろか、調査も十分に行われてきませんでした。 今後は沿岸・海洋の生息調査やデータ収集に努め、希少性の高い生物の生息域保護などの積極的な取組、絶滅に瀕しているジュゴンやニシコククジラの早急な保 護に着手する必要があります。
【理由】 現状と課題についての記述がない!!!
 
意見12)
【項目等】 同2.7 (具体的施策)
【ページ数】 180頁
【行】
【意見】 最初の○の後に以下の文章を付け加える

「野生水生生物のレッドデータブックを更新し、生態系の要の種である希少な海棲哺乳類等を洗い出し、重点海域については海洋保護区とするなど、生息域の保護や漁業との調整をはじめとする保護・管理に必要な多様な手段を講じます。」
 
意見13)
【項目等】 同上
【ページ数】 180頁
【行】
【意見】 2つ目の○の「サメ、海鳥、ウミガメ」のあとにクジラ類などの海棲哺乳類を付け加える。
【理由】 ニシコククジラ、ザトウクジラ、セミクジラなど希少な種が混獲されている。また、ほかと書き振りをそろえるため。
 
意見14)
【項目等】 同2.8 (具体的施策)
【意見】 意見7と同じ理由です。
 
意見15)
【項目等】 第2部 第2章 1.1 レッドリスト(具体的施策)
【ページ数】 191頁
【行】 2行目のあと
【意見】 以下を付け加える。

○現在水産庁管轄のためレッドリスト掲載種となっていない種についても検討し、科学的根拠からニシコククジラなど絶滅危惧種をリストに加える。
 
意見16)
【項目等】 1.2(現状と課題)
【ページ数】 192頁
【行】 (具体的施策)の最後の行
【意見】 「ジュゴンについては」を以下に修文。

「ジュゴンについては、引き続き、生息環境のモニタリングや漁業者との共生に向けた取組とともに、生息地保護に努めます」
 
意見17)
【項目等】 第2章第4節 2.3 ワシントン条約 (具体的施策)
【ページ数】 242頁
【行】 3行目のあと。
【意見】 以下を付け加える。

「また、これまで留保としてきた付属書Iの種についても国際協力の観点から見直しを行います」
 
意見18)
【項目等】 第2章第4節 2.10 ボン条約 (具体的施策)
【ページ数】 247頁
【行】 3行目から
【意見】 以下に修文する。

「(前略)本条約に関連する協定・覚書を含め、絶滅の恐れのある移動性野生動物種の保存をはかるため、早急に本条約批准のための環境を整備します。」
【理由】 現状として書かれている批准しない理由「捕獲を禁止される動物につき意見を異にする」ということばは、本条約にも批准しているワシントン条約と同じように留保の手続きが保障されているので理由になっていない。

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