海洋基本計画への要望書

総合海洋政策本部と環境省自然保護局・地球環境局に下記要望書を賛同された方々と連名にて送付しました。


海洋基本計画への要望書


海洋は、人類すべての共有の財産であり、当然特定の利害関係者のものではありません。2002年から3年間をかけて1400名もの科学者によって検証され た国連ミレニアム評価におきましても、生物多様性によってもたらされる生態系サービスが人類の生活の基盤を築き、また経済活動を支えていることは明らか です。
昨年7月に「海洋基本法」が制定され、それを受けて総合海洋政策本部において「海洋基本計画」の策定作業が進められています。その策定・審議過程での市民 やNGO、特に自然環境保全などの活動を行う者の参加はかないませんでしたが、提案者である国会議員の方々を主なメンバーとして「海洋基本法フォローアップ研究会」が設置され、海洋基本計画に関する関係各団体等からの意見聴取が行われ、数分間ではありますが市民団体として参加の機会が得られました。しかし、参与会議を経て出された案へのその反映は、不十分なものであると考えます。
「海洋基本法」第2条に明記されているように、「海洋の生物多様性が確保されることその他の良好な海洋環境が保全されることが人類の存続の基盤」であることから、計画におけるあらゆる段階での生物多様性保全、海洋環境保全が担保されなくてはならないものと考えます。
また、昨年11月に閣議決定された第3次生物多様性国家戦略におきましても、沿岸・海洋の生物多様性の保全が明記され、海洋基本計画におきましても生物多様性国家戦略との整合性がはかられるべきであると考えます。
「環境と開発に関するリオ宣言」では「環境問題は関心あるすべての市民が適時、参加することで、最も良く対処される」とあり、また国連海洋法条約の趣旨に沿い海洋の多面的な機能を多くの市民が将来にわたって享受できることを願い、以下のように要望を提出します。

2008年2月1日
要望・賛同者(50音順:上記期日現在)
○金子 博(特定非営利活動法人 パートナーオフィス)
○草刈 秀紀(WWFジャパン)
○倉澤 七生(イルカ&クジラ アクション・ネットワーク)
○小島 あずさ(JEAN/クリーンアップ全国事務局)
○小林 幸治(特定非営利活動法人 市民がつくる政策調査会)
○花輪 伸一(WWFジャパン)
○羽生 洋三(有明海民・市民ネットワーク)
○廣瀬 捻也(東アジア環境情報発伝所)


[要望 1] 生物多様性の明記を
1)総論に、海洋環境を保全する重要なキーワードとして「海洋の生物多様性」を明記するとともに、関係するすべての文脈において、海洋基本法に書き込まれ た「海洋の生物多様性が確保されることその他の良好な海洋環境が保全されることが人類の存続の基盤」を前提とした計画である旨、明記することを要望します。
*対象項目:総論(1)(3)目標 第1部 1海洋の開発及び海洋環境の保全との調査 3 科学的知見の充実 5 海洋の総合的管理 6 海洋に関する国際協調 など

2)海洋産業の推進に関しては、ミレニアム生態系評価における生物多様性の生態系サービスが指摘されていることを考慮し、生物多様性保全がすべての事業の前提であることを総論等において明記することを要望します。
*対象項目:総論 (1) 海洋と我々の係わり、目標2、第1部 4海洋産業の健全な発展5海洋の総合的管理 第2部海洋産業の振興及び国際競争力の強化など


[要望 2] 環境アセスメントの必要性の明記を
原案では、「海洋産業の健全な発展」として“…明確な目標の設定、調査・研究・開発から実用に至る合理的な計画づくり等…”などと示されていますが、「海洋の健全な発展」のためには、“海洋産業と海洋環境の保護・保全等のあり方”なども十分検討すべき事項であり、「計画段階での海洋環境影響評価(アセスメ ント)の実施」、「開発、利用等に関して(総合的な)環境影響評価(アセスメント)手法の開発と実施」などを明記することを要望します。
*対象項目:第1部の4、第2部 1 海洋資源の開発及び利用の推進、2(2)第3部 など


[要望 3] 横断的・複合的調査の必要性の明記を
原案(海洋基本計画(素案))では、さまざまな調査が具体的に明記され、その必要性が示されています。しかし、これまで実施されてきた調査については、あくまで個別的な調査であり、それぞれの調査の関連性が希薄で、海洋環境の保護・保全のためにはその関連性をも含めた調査設計が必要だと考えます。“それぞれの分野を横断的、複合的にした調査の実施”など、「横断的・複合的な調査」の必要性を明記することを要望します。
*第1部の3、第2部の6 など


[要望 4] 保護区のネットワークとエコツーリズムの明記を
海洋保護区とそのネットワークの構築による沿岸漁業の再生、エコツーリズムの振興を重要な柱とすることを明記するよう要望します。
*対象項目:総論 目標2、第1部 1 海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和、第1部 3 科学的知見の充実、第1部 5 海洋の総合的管理、第1部 6 海洋に関する国際的協調、第2部 2 海洋環境の保全等、第2部 10 離島の保全等、第2部 11 国際的な連携の確保及び国際協力の推進 など


[要望 5] 湿地保全の明記を
生物多様性国家戦略との整合性をはかるため、ラムサール湿地「干潟や海域(慶良間、串本)」の数やエリアを増やす目標を明記するよう要望します。
*対象項目:第3部 海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 など


[要望 6] 調査への市民参加の明記を
原案では、“国民全体の海洋に関する理解、関心の増進”などの必要性が示されていますが、その具体的方策として“各種調査の実施にあたっては国民(市民) の参加を促すなどによる理解、関心の増進などを図る”など、「各種海洋調査の実施における市民参加」を明記することを要望します。
*対象項目:総論(1)、目標3、第1部 5 海洋の総合的管理、第2部 2 海洋環境の保全等、第2部の6 海洋調査の推進、 9 沿岸域の総合的管理、第2部 12 海洋に関する国民の理解の増進と人材育成 なfど


[要望 7] 情報共有・連携の強化と管理への市民参加の明記を
原案では、「海洋の総合的管理」として“陸域からの汚濁負荷の低減”、“発生源対策を含めた漂流・漂着ゴミ問題”、“保護区の設定等新たな海洋環境や生態 系管理手法”などが示されていますが、その管理においては、市民(国民)全体の海洋に関する理解、関心の増進が必要であり、“特に沿岸海域の管理については、広く市民(国民)の参加のもとに行う”、“関係者による情報共有、連携強化体制づくり、市民(国民)参加の推進を進める”などを明記することを要望します。
*対象項目:第1部の5 海洋の総合的管理、第2部の9沿岸域の総合的管理(3) など


[要望 8] 海洋環境保護・保全における国際協調の明記を
 原案では、「海洋における国際的協調」として、さまざまな国際的な貢献方策などが示されています。その方策課題として“漂流・漂着ゴミ”や“保護区の設定”などについても国際間の協調が必要であり、そのための“調査手法や観測データの国際的な共有化などの実現を推進”することなど、海洋環境保護・保全に おける国際協調に関する事項を明記するよう要望します。
*対象項目:第1部6、第2部 3 排他的経済水域等の開発等の推進 11の(3) など


[要望 9] 小規模漁業者と島嶼の生活配慮の明記を
海洋産業による大規模開発だけでなく、沿岸の小規模漁業者や島嶼部の住民の生活に配慮した手法を選択する事項の明記を要望します。
*対象項目:第1部 4 海洋産業の健全な発展、第2部 8 海洋産業の振興及び国際協力の強化、第2部 9 沿岸域の総合的管理 など


 
<参考>
●環境と開発に関するリオ宣言(抜粋)
[第四原則]
 持続可能な開発を達成するために、環境の保護は開発過程の欠くことのできない部分とならなければならず、それから離れて検討することはできない。

[第七原則]
 各国は地球の生態系の健全性および完全性を保全、保護、復元するために全地球的に協力する精神で協力しなければならない。地球環境の悪化への関与はそれぞれ異なることから、各国は普遍的だが異なった責任を持つ。先進諸国は、彼らの社会が地球環境にかけている圧力および支配している技術、財源の観点から、 持続可能な開発を国際的に追求する上で有している責任を認識する。

[第十原則]
 環境問題は関心あるすべての市民が適時、参加することで、最も良く対処される。国内のレベルでは、個々人は、危険物質や地域社会の活動を含む公共機関が持っている環境関係の情報を適切に入手し、政策決定に参加できる機会を得なければならない。国家は情報を広く公開し、国民の認識と参加を促進、奨励しなければならない。賠償や救済を含む、司法や行政手続きへの効果的な参加が与えられるべきである。



●国連海洋法条約(抜粋)
前文:この条約を通じ、すべての国の主権に妥当な考慮を払いつつ、国際交通を促進し、かつ、海洋の平和的利用、海洋資源の衡平かつ効果的な利用、海洋生物 資源の保存並びに海洋環境の研究、保護及び保全を促進するような海洋の法的株序を確立することが望ましいことを認識し、・・・。



●ミレニアム生態系評価
http://www.env.go.jp/council/32tokubetsu21c/y320-07/mat03-3.pdf

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