緊急プレスリリース : イワシクジラの販売は国際取引違反の可能性?!
2018年9月29日
9月26日、早稲田大学のグローバルガバナンス研究所主催のシンポジウムのハイライトとして、ゲスト講演したアメリカのルイス&クラーク法科大学教授のエリカ・ライマン教授の「日本によるイワシクジラ製品の海からの持ち込み:それはワシントン条約違反なのか」では、日本が国際取締条約により実施してきた調査捕鯨により北太平洋で捕獲したイワシクジラの国内への持ち込みが、野生動植物の国際取引を規制するいわゆるワシントン条約違反の可能性が指摘されました。ワシントン条約の規則では、公海上で捕獲された保護対象種の自国内への陸揚げ(「海からの持ち込み」と称する)も規制の対象となります。
日本は、国際取引禁止の留保をつけていない北太平洋のイワシクジラをこれまで2002年から1584頭分陸揚げしており、これからも2022年までの間に毎年134頭ずつ捕獲する予定でいます。
捕獲されたクジラは、1頭ずつ洋上で解体され、目玉や内臓組織など調査用サンプルとして日本鯨類研究所に送られる部分とは別に1頭で12トンほどの可食部分は陸揚げされてレストランやスーパーマーケット、あるいは学校給食に利用されています。毎年、1400トンもの鯨肉が洋上で真空パックされ、冷凍された状態で陸揚げされています。これらすべての副産物の商業的な性格にかかわらず、日本はワシントン条約に提出した書類で、これらは科学調査によるものだから合法であると言っています。
ワシントン条約の常設委員会は、2016年よりイワシクジラの海からの持ち込みについて検証し、これまで回答のなかった質問への答えを求め、同時に調査団の派遣を行いました。10月1日からソチで開催される第90回常設委員会では事務局の報告を検討し、日本が条約を遵守しているかどうかの議論が行われます。もし委員会が事務局の結論に合意し、イワシクジラの肉の導入が第一義的に商業捕鯨であると判断すれば、条約遵守の対象となります。そしてもし日本が遵守規定をなおざりにし、鯨肉の陸揚げを停止しなければ、委員会はワシントン条約の182の参加国に日本が条約を遵守するまであらゆる輸出入を停止するよう勧告することができます。
イワシクジラの販売のための導入が違反であるとされれば国内産業への波及も免れません。日本における多様な産業、例えば木材輸入、生きた爬虫類などのペット商品や皮革製品を扱う産業への大きな打撃を伴うかもしれません。さらには、これまで流通してきたイワシクジラ肉の在庫はどうか、日本が国内流通は合法としていても、国際的には違法であるイワシクジラの流通を続けられるのか、といった疑義も起こります。
参加者の中には「日本の場合、文化なので商業流通とは異なる」という声もあったようです。
日本は、これまでも捕鯨は日本の長い歴史を持ち、沿岸における捕鯨が文化的にも重要だとしていますが、日本が近代的な猟法によってイワシクジラを捕獲したのは20世紀からです。そして、モラトリアム以降、日本がイワシクジラを調査捕鯨の対象としたのは2002年からです。
日本市民として、今後も日本が毎年134頭のイワシクジラを捕獲し続けることによる他の野生生物取引への影響を十分考慮する必要があるのではないでしょか。ワシントン条約常設委員会の開催を前に私たちは日本政府への真摯な対応を強く求めます。