第52回IWC会議報告

イルカ&クジラ・アクション・ネットワークのメンバー2名は、オーストラリアのアデレードで開催された第52回IWC年次総会にオブザーバー参加しました。商業捕鯨の再開に反対する私たちのステートメントは、賛同いただいた65団体10個人の名前を添えて初日に事務局に提出。各国代表、メディア、NGOに、日本政府代表団の意見が必ずしも日本国民を代表したものではないことをアピール しました。

会議の結果は、新聞・TV等で伝えられましたので改めて繰り返しませんが、その過程の議論は必ずしも報道の通りではありませんでした。

メディアが伝えなかった、私たちの見てきたIWCを報告します。

その1 科学とはなにか

日本政府は、「科学的な根拠をもとに日本は捕鯨再開を求めているが、反捕鯨国は科学を無視して再開に反対している」と主張しています。会議中にも「日本が調査捕鯨を行なってこそ科学的なデータがある。他の国は何もしていないのに反対している。反捕鯨国は科学を知らない国ばかり」というような発言を繰り返しました。

しかし、たとえば開発計画に対する環境影響評価が、開発を求める側とそうでない側では異なるように、捕鯨産業を存続させることを大前提とした科学(調査)とそこから導く結論が唯一絶対とするのはまちがいです。目的が違えば、当然ながら方法論も結果も違ってきます。自分たちだけが唯一正しいと主張する態度では、今ある溝は埋まりません。

その2 IWC本会議で政治的なのはだれか

「科学委員会の決定を無視してIWCの場が政治的に利用されている」という日本政府の主張がたびたび報道されています。「環境保護・自然保護活動は、欧米がアジアの経済進出を阻むために行っている謀略。クジラはそのシンボル」と言い切る人までいます。

IWCは、捕鯨についての国際的な取り決めの場ですが、なぜこうした場が必要とされたかをまず認識すべきです。過去のIWCは、クジラの資源管理について失敗を繰り返し、大型のクジラ種から次々と取り尽くしてしまいました。その原因は、IWCの取り決めが国際的な合意を前提とし、合意に反する行為に対して有効な措置が取れなかったことにあります。

日本政府はIWCが機能不全だという言い方をしますが、実は機能不全を起こしているもとは、IWCの合意を無視してクジラを捕獲し続けている日本にあると言えるのではないでしょうか。

日本政府は、自分達の主張がだんだん認められてきたと言っていますが、その実態は、 金にあかせた票買い であることを世界の人々は苦々しい思いで見ています。

その3 日本政府は何を求めているのか

もし、日本が本当に限られた地域のクジラ食を守りたいのであれば、なぜ、アイルランド提案(南極海からは撤退し、沿岸での捕鯨を再開する)に反対したのでしょうか? 密猟や密輸を防ぐ有効な手だてをなぜとらないのでしょうか?

その4 いつまで続くのか

クジラだけでなく、象牙やタイマイを始めとする野生動物の国際取引でも日本は同じようにODAをバックにして自国の主張を通そうとしています。こうした態度は、国際的な反発を招くもとであり、そんな方策がいつまでも通用するほど世界の目はなまやさしいものではないと思います。政府は、現在の利益だけを考えるのでなく、将来の世代をふくめて、これからの地球環境に本当に寄与する政策を考えるべきです。

国内では減反を奨励して農地を荒らし、干潟をつぶして海をダメにしておきながら、多くの食料品を輸入して大量の残飯を出し続けている国の政府が今考えるべきことは、金にあかせて無理をとおし、遠い海の自然資源を収奪にいくことではないはずです。しかし、残念ながら、IWCを見る限り、日本政府代表団にはそのような認識はまったくないようでした。

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