2011年10月27日 共同プレスリリース
補正予算22.8億円は、ムダな南極海での捕鯨ではなく、地域再生と被災者の支援に
この10月21日、政府は第3次補正予算を閣議決定しました。その柱となるものは、3月11日の地震、津波、そして原発事故による深刻な被害を受けた地 域、市民への復興支援です。しかし、この中に、復興支援とは関係のない、調査捕鯨の継続に向けた補助金およそ23億円が含まれています(注1)。 これに対し、本日10月27日、国内NGO14団体が共同声明を発表し、調査捕鯨への補助金ではなく被災者の支援に使うよう求めました(注2)。
調査捕鯨に関しては、国際的にもその科学的な根拠や合意形成、国際法で決められたサンクチュアリ内での捕鯨に対する批判があり、去る7月に答 申された調査捕鯨に関する検討委員会の中間報告の中でも、縮小/停止という少数意見が書き込まれました。調査捕鯨には、これまでも補助金(5 億+抗議船対策費2億円)が毎年支出されており、南極海調査だけで考えれば、民間の日本鯨類研究所の支払うべき費用をすべて国が肩代わりする ことになります。
グリーンピース・ジャパン事務局長の佐藤潤一は、「調査捕鯨の鯨肉販売については既にその不透明さが明らかにされています。これ以上の国によ る支出は、第3次補正予算の主旨に反するだけではなく、国際的にも不信感を高めるだけです」と述べました。
今回、復興支援の名の下での税金の無駄使いについて、IKAN事務局長の倉澤七生は、「正味2日間という短期間で、多様な市民団体14が賛同 を表明しました。復興のためというのであれば、沿岸地域の再生や被災者の支援に回したいというのが市民の多くの思いだと思います。賛同はこれ からも増えていくでしょう」と話しました。
注1: 水産庁 第3次 補正予算案「鯨類捕獲調査安定化推進対策」
補正予算22.8億円は、ムダな南極海での捕鯨ではなく地域再生と被災者の支援に
内閣総理大臣 野田 佳彦 殿
財務大臣 安住 淳 殿
農林水産大臣 鹿野 道彦 殿
2011年10月21日、政府は11年度第3次補正予算案を閣議決定し、その内容を公表しました。第3次補正予算は、東日本大震災により 被害を受けた、もしくは受けている方々に必要な事業を最優先することが目的のはずです。しかし、水産庁が第3次補正予算案として公表した 「鯨類捕獲調査安定化推進対策」は、22億8400万円もの税金を費やすにもかかわらず、その政策目標が「平成23年度南極海鯨類捕獲調 査を計画どおり実施」となっており、支援事業とは関係がありません。
2011年2月に、調査捕鯨船団はその経営悪化から事業費推定30億円のうち19億円もの負債を抱えていると報道されています。このまま 約23億円もの税金が復興の名の下に調査捕鯨事業に投入されれば、この負債を穴埋めし利権事業の延命を私たちの税金を使って図ろうとして いると思われても仕方がありません。
日本は東日本大震災を乗り越えるために、世界各国の政府、非政府、民間を問わず様々な機関から多大な支援を受けてきました。一方では、残 念なことに、回収不可能な放射性物質を海洋に大量に放出し、世界各国に多大な迷惑もかけ続けています。今回の第3次補正予算において、国 際的に合意を得られない南極海での捕鯨を継続するために税金を投入すれば、国際社会は日本の復興に対する姿勢に疑問を持つばかりか、支援 の恩をあだで返したと理解するに違いありません。
第3次補正予算において「鯨類捕獲調査安定化推進対策」を計上する代わりに、沿岸地域の再生、被災者の支援等、今、本当に支援が必要なと ころに向けて下さるよう、心からお願い申し上げます。
<賛同団体>
あしたへの選択/Choices for Tomorrow (CFT)
IFAW(国際動物福祉基金)日本事務所
イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク(IKAN)
海の生き物を守る会
オルカラボ・サポート・ソサエティ(OSS)
化学物質問題市民研究会
国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
シャチ・ドット・ジェイピー(shachi.jp)
ジュゴン保護キャンペーンセンター
NPO法人 地球生物会議(ALIVE)
NPO法人 トラ・ゾウ保護基金
日本環境法律家連盟(JELF)
バイオダイバーシティ・インフォーメーション・ボックス
NPO法人 ラムサール・ネットワーク日本
<個人>
草刈秀則(野生動物保護学会会員)
佐久間淳子(自然の権利基金/ジャーナリスト)
富山洋子(NPO法人 日本消費者連盟)
羽後静子(UNBD市民ネット共同代表)
村瀬俊幸(UNBD市民ネット事務局)
<ラテンアメリカの賛同団体>(10団体 11月4日現在)
日本のNGOが、調査捕鯨への多額の補正予算計上に抗議して上記の声明を出したことを知った中南米諸国のNGOが声明に賛同しました。
Fundación Marybio (Argentina)
Instituto de Conservación de Ballenas (Argentina)
A.U.P.L.A (Uruguay)
Centro Ecoceanos (Chile)
Coalición CEFU (Chile)
Centro de Conservación Cetacea (Chile)
Anima Naturalis (International)
Mangrove Action Project (International)
Alerta Isla Riesco (Chile)
Selva Vida Sin Fronteras(Equador)
中南米諸国の人たちは、捕鯨による特定の人たちの利益ではなく、貧しい沿岸地域でホエールウォッチングを営んでいる地元の人たちを応 援してきており、日本が遠い南極海まで'調査'捕鯨を実施し船を出すことに強く反対しています。