IWCローマ中間会合で意見陳述

IKANは、IWC(国際捕鯨委員会)中間会合で5分間の意見陳述の機会を得て、以下のようなスピーチを行った。対立する議論の合意に向けて公正な情報の共有が不可欠であると考えたからである。


 まず最初に、私どものような小さな日本の NGOに話す機会を下さったことを議長ならびにこの会議に参加されているかたがたすべてに感謝いたします。

 私どもは主に国内で鯨類を中心とする野生生物の保全に関する活動をしています。

 クジラは国境に関係なく世界中の海という海を移動する生き物ですので、クジラを国際的に管理していくというのは非常に重要です。ですからまず、日ごろからクジラの国際管理のために国際交渉に尽力されているすべての人たちに感謝したいと思います。

 IWCは、この間クジラの利用のあり方について対立していることから、前に進むことができませんでした。一方で、地球温暖化やオゾン層破壊、海洋汚染、 船との衝突、騒音や海底開発など、クジラへの悪影響が懸念されるさまざまな課題が山積しています。そうした課題の解決に向かうために対立する立場を超えた 議論がIWCでスタートしていることは歓迎すべきことだと思います。
 私たち人間だけでなく、クジラたちの将来にとっても、IWCが迅速な近代化を成し遂げることが是が非でも必要です。

 そのためにも、日本の国内団体として議長の調停案についての問題点を指摘したいと思います。

 まず、第一の問題点は、東シナ海、黄海や日本海を中心に混在して生息しているミンククジラのことです。
しかし、希少であり環境的な悪影響にさらされているこの個体群の捕獲を認めるということは、南極海のミンククジラの捕獲枠の削減あるいは禁止する選択肢が調停案に含まれることと比べ不適切な内容といわざるを得ません。

 第二の問題点は、混獲の具体的な対策に踏み込んでいないことです。日本では、すでに日本沿岸では毎年100頭以上のミンククジラの混獲があります。
先ほども危機的な状況にあると説明いたしましたストックが日本と韓国によって混穫され、鯨肉市場に流通しております。たとえば、鯨研の2007年のストランディングレコードによると50頭ものJ-stockの捕獲が記録されています。
 近年、混獲されたニシコククジラについて思い出していただきたいと思います。国内で所持や流通は禁じられましたが、混獲を防ぐ積極的な保全策はありません。


 日本を含めたすべての国がニシコククジラやJ-stockのミンククジラの混獲を防ぐためのアクションプランを早急につくるべきではないでしょうか。
日本の沿岸小型捕鯨はそうしたアクションプランなどのより広い文脈で議論されるべきであり、鯨類の保全計画などの要素を含めることが重要です。

 昨年私どものグループはWDCSと協力して、この会議の課題のひとつであります小型沿岸捕鯨に関連し、国内4箇所の捕鯨基地を調査し、4つの地域の歴史と現状をレポートにまとめました。
 その詳細についてはここでは述べませんが、4つのうち2つの町の捕鯨の歴史は比較的新しく、太地と和田においても、小型沿岸捕鯨の歴史という意味では、 古くありません。また、すでに彼らはミンククジラを北西太平洋鯨類捕獲調査で捕獲しています。4つの町はまた、小型鯨類の捕獲を実施し、その肉は調査捕鯨 の肉と同じく商業的に流通しています。彼らにとって肉の商業流通は一番必要なものです。IWCが流通においてこれらのものを区別できるでしょうか。
 伝統や文化を尊重することは重要だと考えますが、それが今回の捕鯨再開提案と直接は結びつかないだろうと思います。
 今回の提案を批判するような言い方をしたくはありませんが、モラトリアムを解除して沿岸捕鯨の合意を築くというのならわかるのです。でも、モラトリアムの元で再開を認めるということを理解するのははなはだ難しいと思っております。
私の申し上げることは以上です。
 最後にIWCのすべてのみなさんのご努力に感謝するとともに、この議論が事実に基づいて行われるよう心からお願いしたいと思います。
10年ほど参加しているなかで、その中で始めて直接意見を申し上げることができたことに感謝しております。

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