違反の内部告発

【オキゴンドウ22頭の違反捕獲が内部告発される】

富戸違反イルカ猟事件について、98年1月、ついにオキゴンドウ22頭違反捕獲の証拠となる納品書が組合関係者より提出され、事態は新展開を迎えた。

この関係者は、当時のイルカ猟について責任ある立場にあった人で、証拠となる「8年10月23日」付の納品書を提出し、当時の状況を証言した。 納品書では、オキゴンドウは22頭が660万円で販売されている。

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オキゴンドウ
 

【バンドウイルカも違反捕獲だった】

また、バンドウイルカについては、10月22日に28頭、翌23日に45頭の合わせて73頭が合計438万円で販売されている。バンドウイルカは、当時、水族館に26頭が販売されたので、これだけで合計99頭になり、こちらも静岡県の捕獲割当数の75頭を24頭も上回る違反捕獲だったことになる。この他に地元住民に売ったり、肉を配ったりしたものもあるので、バンドウイルカの違反捕獲数はさらに多くなりそうだ。

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バンドウイルカ
 

ただし納品書に記載されている和歌山県のクジラ肉加工業者は、この事実を否定しており、静岡新聞の問い合わせに対して「バンドウイルカ43頭だけを購入した」としている。またこの業者は、「バンドウイルカは1頭23万円で買った。ずいぶん大きなイルカだったから」と苦しい言い訳をした。

捕獲当時に、富戸で聞いた話では、バンドウイルカは肉として売られる場合は、1頭5万円くらいとのこと。納品書の数字では1頭あたり6万円になり、妥当な数字だと思われる。また、水族館にはバンドウイルカ1頭が30万~34万円で売られたと言われていたから、このイルカ猟での総売上として組合が報告した1982万円から計算しても、この納品書の数字は妥当なものと思われる。

この件について、監督官庁である水産庁(遠洋課)は「バンドウイルカまで違反していたとすれば大変な問題」とコメントしているが、行政の慣例として、調査は県に任せることになるから、すべては県の対応次第ということになる。

ところが、静岡県水産課の担当者は、イルカ&クジラ・アクション・ネットワークの電話での問い合わせに対して、この新証拠が出る前は、告発を行った漁業者にはまったく話を聞かず、組合の幹部の報告だけをもとに「従来の報告どおり5頭に間違いない」「ちゃんとした調査をした」と言い張った。その答え方も、ほとんど怒鳴るような言い方で、何とも困った対応であった。そして、新証拠が出たと静岡新聞で報じられた後は、あやふやな返事しかせず、相変わらず怒鳴るような言い方をしたり、また「すぐに会議がある」「来客がある」といって電話を切ろうとし、まともには答えてくれなかった。これでは、今度こそ十分な調査をと願う私たちの期待にどこまでこたえてくれるのか心もとないのだが、私たちとしても、いまのところは県の調査に期待する以外に方法がない。

そこで、この事件について、大勢の人が注目していることを県に伝えるために、私たち1人ひとりが、県にきちんとした調査を要請する手紙を出す行動を呼びかけた。

 

【その後】

しかし、こうした努力もむなしく、最終的に県は「確実に違反が行われたという証拠はなかった」と結論し、違反事件の真相は明らかにされないまま幕をとじてしまった。これはとても残念なことではあったが、この間の一連の活動を通じて、社会一般にイルカ猟のことを伝え、漁業者と関係行政機関の人々に、このことへの人々の注目度が高いことをアピールできたことは大きな成果だったと思われる。中でも、漁協関係者の中から進んで違反を明らかにし、不正を正したいという動きが出てきたことは、何にもまして大きな前進だったと思われる。

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