共同声明:すべての調査捕鯨の停止を
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- 作成日 2014年4月23日(水曜)02:16
2014年4月22日
3月31日、国際司法裁判所(ICJ)は、日本政府に対して現行の「南極海の調査捕鯨(JARPAII)」が科学的ではないことから許可を与えないようにとの判決を下しました。その後、日本政府は「判決に従う」と言明しましたが、4月18日に、今年度の「北西太平洋の沿岸調査捕鯨と沖合調査捕鯨(JARPNII)」については捕獲枠を削減して実施し、さらに来年度からは南極海・北西太平洋ともに調査計画を変更して調査を継続する方針であると発表しました。これは、同月16日と18日の衆参両院の農水委員会における調査捕鯨の継続決議に従ったものです。
<JARPN IIの問題点>
JARPNIIにはICJがJARPAIIに対して指摘したのと同様の問題点があります。例えば、妨害行為が行われていないにも関わらず、北西太平洋でも、科学的に必要だと決めた鯨類の捕獲枠に見合った捕獲は実行されていません。これは、鯨肉の供給が過剰になった、もしくはそもそも鯨肉として需要のない種であったための「生産調整」と考えられます。(注)
また、今回変更されたJARPNII計画で、100頭から90頭に捕獲枠が削減されたイワシクジラは国際自然保護連合(IUCN)が定める絶滅危惧種であり、捕獲を開始した2002年には国際的に有名な21人の科学者がJARPNII抗議のための声明をニューヨークタイムズに掲載しています。
JARPNIIの目的であった「生態系モデルの構築」は国内の水産学者ですら不完全さを指摘する(2010年11月の水産学会シンポジウム)ものです。さらに、「クジラが魚を食べつくす」という漁業との競合についての議論も、2009年の国際捕鯨委員会で日本の代表団が「日本政府はクジラが魚を食い尽くすと言ったことはない。関係があるかもしれないから調査している」とそれまでの調査についての説明を翻しています。
<沿岸調査捕鯨の問題点>
日本政府は、沖合調査とは別個に、2000年から沿岸での調査を小型捕鯨業者に委託しています。小型捕鯨業者は、地域捕鯨推進協議会を組織し、この調査の実施主体となり、開始当時は50頭、2004年からは春期に鮎川、秋期に釧路でそれぞれ60頭のミンククジラ枠を付けてきました。捕獲したクジラのサンプルは日本鯨類研究所に送られ、鯨肉は生肉として市場流通します。この業務委託は、南極海や北西太平洋での調査捕鯨の拡大によって沿岸でのハクジラの捕獲、販売不振と経営悪化を招いた事から、沿岸業者に便宜が図られた国の補助事業だと言えます。
沿岸におけるミンククジラの捕獲数も捕獲枠120頭から100頭に削減されましたが、今回の枠の削減はそもそも過去数年の捕獲実績に沿ったものであり、判決を受けて削減したという事ではありません。
<ICJ 判決を受けて>
調査捕鯨は、当初の目的であった「商業捕鯨再開」という大義名分を既に失っています。ましてや、「科学的調査のための捕鯨」ではなく、「鯨肉を確保するための捕鯨」であるという事実は誰の目にも明らかです。
鯨肉市場は縮小し、国内需要はなきに等しいものです。確かに一部地域ではその利用が続いていますが、そのために合理的でない調査の継続を選択したり、海外からの鯨肉輸入を促進したりするようなあり方は即刻やめるべきです。5月上旬にはアイスランドより、およそ2000トンという絶滅危惧種のナガスクジラの鯨肉が日本に到着する見込みです。
一部の議員たちの票田の獲得のため、また、一部の役人と業界の癒着のため、これまで日本人全体の国益が失われてきました。また、真に科学を目的としていない「調査捕鯨」を「科学である」と主張することによる日本の科学への信頼性も失われます。今回のICJ判決を契機にすべての調査捕鯨を停止することを訴えます。