たびたびのシャチの死 何が起きているのか

「2月7日、北海道羅臼町でシャチの群れ12頭が流氷に閉じ込められ、救助したいという願いもむなしく、9頭が死ぬという事件がありました。そして今度は、択捉島の北部の別飛(ロシア名・レイドボ)沖約100メートルの浅瀬で、シャチ6頭が流氷に閉じ込められ、地元住民の救出の試みにかかわらず、これまでに5頭が死んでしまったそうです。

羅臼の悲劇は、乳飲み子を含む群れが子どもをかばったためではないか、といわれていますが、 そうしたことも含めて、北の海で何らかの異変が起き、悲しい事件が重なってしまったのかもしれません。

シャチについては、映画「フリーウィリー」のヒットでもわかるように、イルカやクジラの中でも大変人気の高い種です。そして、海外では生態調査がよく行われ、その生活などの解明も進んでいます。

ところが、日本近海のシャチの生態については、残念なことにほとんど何もわかっていない状態なのです。

下図(日本沿岸のシャチ捕獲数推移)をご覧になるとお分かりのように、シャチは60年代から70年代に小型沿岸捕鯨で1000頭あまりが捕獲されてしまいました。シャチのように食物連鎖の頂点にいる動物にとってこの数字は決して少ない数字ではありません。

その結果、沿岸に生息する個体群はいなくなってしまったのではないか、という研究者もいます。

しかし、シャチなどクジラ類は水産庁が管轄する動物で、「希少種」と分類されていても、捕獲規制を行う以上の保護管理の施策はありません。そればかりか、その個体数の推定は、生活史が似ているといわれるコビレゴンドウからの類推でしかないのです!できるだけ早急にシャチの生態を解明し、保護策を講じる必要があると考えられ、今回はそのいいチャンスでもあります。

今回羅臼で死んでしまったシャチはアザラシを食べていたと報告され、広く海洋を移動するタイプのシャチだと考えられます。彼らはいったいどの海域を移動しているのでしょうか?そして、その仲間はどれくらいいるのでしょうか?今回の事件では多くの研究者や関係者が解剖に立会い、シャチについての新しい知見を得たようです。彼らの死が今後の日本沿岸のシャチのことを少しでも明らかにすることができることを祈るばかりです。

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